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ペルー旅行をする方必見! 高山病とその予防策(高度順応/高度順化)について

高山病は、実際になってみないとその辛さを認識しづらいですが、一度体験した人は2度と繰り返したくないと思うものです。以下に高山病とは何か、また高山病回避の方法(順応方法)にはどんなものがあるのかをご案内します。ワラスだけでなく、マチュピチュ遺跡やクスコ、チチカカ湖のあるプーノ、ボリビアのウユニ塩湖等へのご旅行を予定されている方にも役に立つ情報です。

体力や筋力と、高度順応能力は全くの別物です。重い荷物を持ち上げたり長時間にわたって運動できたりする人が、必ずしも高所に強いわけでありません。高山病にかかる確率をなるべく低くし、楽しい山旅にするためにも、ぜひ最後までご一読ください! 動画にまとめたものもあります↓。

高山病とは? 高山病にならないための予防策 (日本語字幕でご覧ください)

◆1. 高山病とは? どんな人がなりやすい?

一般に、低地で生活している人が飛行機やバスなどで1800mから2500m以上の高地(酸素分圧が減少する環境下)へ急速に移動すると、酸素の少ない環境に体を適応させる十分な時間が取れず、低酸素状態となり、頭痛、吐き気、倦怠感、睡眠障害、食欲低下などを伴う初期症状から、高地脳浮腫、高地肺水腫といった命に関わる重篤症状まで、様々な症状が出ることがあります。これらをまとめて「高山病」と呼んでいます。

症状が出る標高やその高さに慣れるまでに要する時間には個人差があり、また同じ人でもその時の体調によって出たり出なかったりがあるため、なりやすい人を特定するのは難しいですが、経験則からいうと、風邪や睡眠不足の人は高山病になる確率が高いため、体調管理のしやすい余裕を持った行動計画を立てられることを強くお勧めします。子供も高山病になりますが、大人よりも順応しやすいと言われています。

ピスコ峰登山08

◆2. 高山病3つの症候群とその対処法

1) 急性高山病(山酔い)AMS

一番多く見られる初期症状で、頭痛、吐き気や嘔吐、立ちくらみやめまい、倦怠感、睡眠障害、食欲低下が起こります。

このような症状が出た場合は、それ以上高度を上げず、激しい運動を控え、水をよく飲み、防寒対策をしっかりしましょう。可能であれば酸素吸入を行ないます。寝るときは上半身を少し高くするとよいでしょう。1〜2日程度経っても症状がよくならない、もしくは悪化するようであれば標高の低い場所へ下ろします。

2) 高地脳浮腫 HACE

急性高山病の症状が進み重症化すると、体液が脳にたまる状態となる「高地脳浮腫」になります。倦怠感が強くなり、意味不明な発言をするようになり、日時や場所を認識できず、地面に引いた線に沿って真っ直ぐ歩けなくなります(縦列歩行テスト)。そのまま放置すると昏睡から死に至ります。

このような症状が出た場合は何がなんでも早急に標高の低い場所へ下ろさなければなりません。酸素があれば吸入します。

3) 高地肺水腫 HAPE

急性高山病の症状が進み重症化すると、肺胞に体液がたまる状態となる「高地肺水腫」になります。軽い運動時や安静時でも胸部が圧迫され呼吸が困難になり、通常とは異なる音の咳が出たり、チアノーゼになったり、口から泡を吹いたりすることがあります。

このような症状が出た場合は何がなんでも早急に標高の低い場所へ下ろさなければなりません。酸素があれば吸入します。

バユナラフ登山03

◆3. 高度順応とは? おすすめの順応策

高度順応(高度順化)とは、平地環境に慣れている身体を酸素の少ない高地環境に慣らしていくことを指します。高山病の発症率を下げるために必要不可欠なものです。

あくまでも個人的な経験則ですが、以下の高度順応策を取ることで高山病の症状が出なかったり、症状が出ても軽く済んだりすることが多いと感じていますのでぜひ実行してみてください!

個人間、個人内でばらつきはあるにせよ、体質的に順応が難しい場合を除けば、体は徐々に高度に慣れていきます。

1) 日中に高所へ行き、夜は低所で睡眠をとる

高度順応に最適なのは、日中に高い場所へ行き、その後低い場所まで下りてきて睡眠をとることです。また、数日かけて、全体の高度を徐々に上げていく(低めの高所から高めの高所へ徐々に慣れていく)ことがとても重要です。

標高3100mのワラスに来られる際、もし専用車を利用していれば、途中のコノコチャ(4100m)付近で下車し30分ほど休憩したり周囲を軽く歩いてみたりする時間を取られると良いでしょう。

路線バス利用で途中下車できずにワラスに来られる場合は(もちろん専用車で来られても!)、以下にご案内する順応策を取り万全の状態で高山病発症を回避されることを強くお勧めします。

また移動距離は長くなりますが、ワラスではなく、標高の低いカルワス(2650m)やカラス(2260m)で宿泊するという方法もあります。

2) たくさん水分を補給し、たくさん排尿する

肺で酸素を受け取り体内に供給している血液内の赤血球ヘモグロビンの活動を妨げないよう、血液の動きをサラサラな状態に保つ(活発な動きを保つ)ことが重要です。そのためにも、1日1.5~2リットル以上の水を補給し、こまめに排尿しましょう。また高地では、呼吸の増加と低湿度により脱水が生じやすくなり、頭痛の一因となり得ますので、水の補給は定期的に行なってください。低酸素下の山で運動をし水分不足になると(血液やリンパ液の流れが滞ると)、むくみの原因にもなります。

3) 防寒対策をしっかりする

低酸素状態の中で体を冷やしてしまうと、高確率で高山病になります。体は寒さを感じると、毛細血管が収縮し血流が減少します(全身に酸素が行き渡りにくくなります)。特に頭や手足を冷やさないようご注意ください。飛行機やバス等で高地へ向かう際はあらかじめ羽織る物やニット帽を持ち込み、しっかりとした防寒対策をしてください。

4) 食べ過ぎ・飲酒・喫煙に注意する

胃での消化には血液が必要です。ただでさえ酸素が少なく消化スピードが遅くなる高地で食べ過ぎてしまうと、消化のために血液が胃に集中し、頭などへ回る血液が減り酸素供給量が減ってしまいます。いつもより少なめに、消化にいいものを食べましょう。特に肉類、チーズ、トウモロコシ、キャベツ、豆類、ナッツ類の食べすぎには要注意。体が高度に慣れるまでは飲酒や喫煙も控えたほうが無難です。

5) 高地に着いたらなるべく重い荷物を背負わず、呼吸が乱れすぎない範囲で行動する

重い荷物を背負って歩くだけでいつもより酸素を消費します。持ってくれる人がいれば遠慮せず持ってもらいましょう。歩くときは呼吸に集中! 慣れない高地ではすぐに息が切れますが、ハァハァハァと呼吸が激しく乱れるようなら歩行速度を落とし深呼吸し呼吸を整えましょう。酸素を極力消費しない工夫が必要です。

6) 体調を整え、睡眠薬など呼吸抑制作用のある薬の服用は避けましょう

睡眠不足も高山病に影響します。高地に入る前にはよく睡眠をとりましょう。高地では睡眠の質が低下することが一般的ですが、睡眠薬など呼吸抑制作用のある薬を高地で服用することは危険を伴います。避けたほうがよいでしょう。

7) 高山病対策の薬を飲む

できれば薬に頼らず、上記対策をしっかり取って体を自然に順応させることが望ましいですが、短い期間でのご旅行でゆっくり高度順応ができない場合などは、薬に頼ってみるのも一つの手ではあります。高山病が発症してから服用してもあまり意味がないという意見もあるため、予防的に飲むといいでしょう(とはいえ、発症後に飲んで効く方もいます😅)。

日本では「ダイアモックス(主成分:アセタゾラミドナトリウム)」という薬が処方されます。体の低酸素状態を改善する薬で、頻尿や手足の痺れなどの副作用があります。高地に行く1日~半日前から半錠(125mg)を朝と夕に服用し、3000m以上の高地にいる間、かつ高度がそれ以上あがらない場合は2~3日程度まで続けて飲むとよいと言われています。続けて高度を上げていく場合はさらに連続して服用することもあります。ペルーでは、薬局で「アセタソラミデ/acetazoramide」と言えば、ダイアモックスと同じ成分の錠剤が購入できます。

ボリビア製の高山病対策薬(鎮痛剤)として「ソローチェ・ピルス(Sorojchi Pills、主成分:アセチルサリチル酸)」も薬局で売っており、予防の場合は2500m以上の高所に行く2時間程度前から服用を開始し、1カプセルを8時間おきに服用すると効果があるようです(15歳以下の子どもは服用不可)。

どの薬もその影響で体の水分がたくさん出ていきますので、充分な水分補給(1日1.5〜2リットル以上)が必要不可欠です。

8) 最後に、心配しすぎにご注意!

「高山病になるかも・・・」「高山病になったらどうしよう・・・」と心配していると、なんとなく気分がだるくなってきて高山病にかかったような気持ちになることがあるので不思議です。以前、標高約20mのリマ国際空港に到着された方がもう高地に到着していると勘違いされていて、息苦しさを感じていたことがあります。また不安によってお腹を下す方もいました。極度に心配しすぎず、「順応策を取っていれば大丈夫!」と気持ちを楽にするのも大事な要素かもしれません。