ワラスのカーニバルには「混沌」をなくし「秩序」を生み出すという意味があり、2月下旬の土曜日に始まり水曜日まで5日間続きます。この期間中、混沌を象徴する “Ño Carnavalón/ニョ・カルナバロン” という人物が登場し、町は混沌の渦中に。5日目最終日に、混沌さを浄化し、母なる大地 “パチャママ” に調和がもたらされるよう、この人物をキルカイ川に投げ入れる(埋葬する)のだそうです。これにより、混沌がなくなり、混沌の対局にある “秩序” が生まれると。
キリスト教では、復活祭(イースター)の前に厳かに質素に過ごす期間「四旬節(しじゅんせつ)」があり、その節制の40日間に入る前に、身分や階級関係なくハメを外して騒ぎ、肉などが食べられなくなる前に思い切り食べ、水や小麦粉などを投げ合って日頃の鬱憤を晴らし、仮装したり騒いだりして悪霊や災厄を追い払おうという目的でカーニバルをするようになったようですね。カーニバルの語源はラテン語で「肉よさらば、肉食を断つ」だそうです。
このようにキリスト教由来のカーニバルと、アンデスの伝統が融合するワラスのカーニバルですが、十字架を掲げて町を練り歩くという、ペルーの他の県にはない唯一の伝統を続けているのも大きな特徴です。普段はワラスの各地区を守るために設置されている十字架たちがこの時期にワラス中心地にある2つの教会に集まって力を取り戻すのです。元々ワラスでは聖なる石像や角ばった一枚岩ワンカが町を守っていましたが、時代の変化とともにそれらが十字架に変わりました。
楽しみ喜ぶ民族は、逆境を乗り越え、長らく生存していくことができる。混沌を打破する手段としてここ最近ペルーを騒がしているのが、主にクスコやプーノなど南部で起きている暴力的なデモ活動ですが、暴力ではないこのようなお祭りで平和的解決に漕ぎ着けられる世界になったらなんて素晴らしいのでしょう。