ペルー初上陸となった2007年。初めて富士山より高い山に登った。それがバユナラフ峰5686mだった。

まず驚いたのは、ベースキャンプ地のヤカ谷の美しさ。谷の奥には巨大な氷河をまとったオクシャパルカ峰5888mがまぶしく光り、テント横の岸壁には滝が流れ、谷を蛇行する乳白色の川の近くでは放牧牛が悠々と歩いていた。夜はもちろん満天の星。

「ヤバい、こんな景色見せられちゃあ、間違いなく海外登山にハマる」と思ったのを覚えている。

翌日モレーンキャンプまで歩を進め、3日目、夜中2時くらいに頂上へ向けて歩き始めた。雪に刺さるアイゼンの音と自分の呼吸音が、星々またたく無音の世界に重なっていく。

日の出少し前のブルーアワー、北方に目をやると、ペルー最高峰ワスカラン峰が信じられないくらい美しく輝いていた。

最後の急登に取りつき、初めて体験する5000m級の空気感に呼吸を大きく乱しながら、重い足を一歩一歩、重力に反する方へと動かし続ける。酸素が少ないとこんなに動けないものなのか！ そして突然・・・目の前の景色が一変した。ついに頂上に立ったのだ。

その時の光景は今でも忘れられない。360度見渡す限り、凛とした威厳漂う世界。それまでの疲れはとうに吹き飛んでいた。

◎体力と雪山歩行技術があれば挑戦できる山：　バユナラフ峰5686m、ピスコ峰5752m、ヤナパクチャ峰5460m

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