Nature and Interpretation Peru
nandi peru

Carnaval Huaracino

ワラスのカーニバル:アンデス伝統文化とキリスト教文化の融合

  • 2023.02.21
Akira Inoue - nandi peru ブログ ペルー ワラス カーニバル アンデス キリスト教 融合

ワラスのカーニバルは「混沌」をなくし「秩序」を生み出すという意味を持ち、1月初・中旬から2月中・下旬にかけて開催されます。期間中、ミス・カーニバルを選出したり、パレードをしたり、踊りや音楽や仮装のコンクールをしたり、十字架のミサをしたり、ユンサ/Yunzaをしたりと数々のイベントが実施されますが、最後は混沌から秩序を生み出す5日間を過ごします。1日目に混沌を象徴する “Ño Carnavalón/ニョ・カルナバロン” という人物(別名:モモ王/Rey Momo)が凱旋パレードをして町に入場し、4日目にニョ・カルナバロンが死に、通夜が執り行われ、5日目最終日にこの人物をキルカイ川に投げ入れ埋葬します。これにより、母なる大地 “パチャママ” に調和がもたらされ、混沌の対局にある “秩序” が生まれると。

ワラス ペルー カーニバル モモ王の埋葬 ブログ 井上晶 ナンディ・ペルー
ワラス ペルー カーニバル モモ王の埋葬 ブログ 井上晶 ナンディ・ペルー
Municipalidad Provincial de Huaraz Facebook Page Live より引用(2024)
モモ王の埋葬(ワラス・キルカイ川)

キリスト教では、復活祭(イースター)の前に厳かに質素に過ごす期間「四旬節(しじゅんせつ)」があり、その節制の40日間に入る前に、身分や階級関係なくハメを外して騒ぎ、肉などが食べられなくなる前に思い切り食べ、水や小麦粉などを投げ合って日頃の鬱憤を晴らし(ワラスの『戦いの火曜日』は想像を絶する凄さ)、仮装したり騒いだりして悪霊や災厄を追い払おうという目的でカーニバルをするようになったようですね。カーニバルの語源はラテン語で「肉よさらば、肉食を断つ」だそうです。

このようにキリスト教由来のカーニバルと、アンデスの伝統が融合するワラスのカーニバルですが、特筆すべきはペルーの中でも唯一ワラスでしか行われていない伝統行事「十字架のミサ」です。普段はワラス各地区や周辺町村、個人宅を守っている大小さまざまな十字架たちが、カーニバルの時期になるとワラス中心地にある2つの教会に集まり、ミサに参加し、聖水をかけてもらい力を得て、元の場所へ戻っていくというものです。元々ワラスでは聖なる石像モノリートや角ばった一枚岩ワンカが町を守っていましたが、時代の変化とともにそれらが十字架信仰に変わりました。

楽しみ喜ぶ民族は、逆境を乗り越え、長らく生存していくことができる。混沌を打破する手段としてここ最近ペルーを騒がしているのが、主にクスコやプーノなど南部で起きている暴力的なデモ活動ですが、逆に新たな混沌を生み出しています。暴力ではないこのようなお祭りで平和的解決に漕ぎ着けられる世界になったらなんて素晴らしいのでしょう。