これまでドローンを操縦していて機体からの受信信号が途切れたことが2度ほどあったのですが、自動的にホームポイント(最初に飛ばした地点)に戻ってくる機能が発動して事なきを得ていました。
しかしこの日、恐れていた事態がついに起こってしまった・・・。
ワスカラン国立公園内の69湖、標高4600m付近を基点に空撮していた時のこと(※国立公園の許可取得済み)。撮影に集中して手持ちのコントローラー画面を注視していたところ、突然機体からの受信信号が消失! 空を見上げると、見えていたはずの白い機体が見当たらない。異常を察したため、コントローラー画面に目を戻し、自動で操縦者のところへ機体を戻すリターンホーム機能を起動したのですが、どういうわけか機体が戻ってこない状況に。あれっ!? いつもと違う! 心の中に急速に広がっていく悪い予感・・・。
<実はこの時は気づかなかったのですが、受信信号が喪失したあと、空に目を移している間に機体が遠くの尾根上に墜落していました。墜落に気付くのはもう少し後>
弱信号ながら、かろうじて送られてくるカメラの映像を見てみると、機体は停止し、遠くに白い山々が写っていて、画面が異常な動きをしていました。これは・・・まさかの墜落!?
信号をもっと強く受けるには自分が高いところに移動しなくてはいけない。そう思い、足場の悪い岩場を上に登ってみたのですが受信信号がよくなる気配はなく、コントロールバーを動かしてみても、1mmも動かない機体。リターンホームのボタンをいくら押しても全く反応しない。カメラを動かすダイヤルを回してみたところ、幸いにもカメラだけは動いた! 上に向いていたカメラを下に向けた時、黒い岩のようなものが見えるではないですか。やはりどこかに墜落し、引っかかって動けなくなったのだということを確信します。
だんだんと真っ白になりかける頭。しかしこの時とっさに、コントローラー画面に表示されていた機体の位置情報をスマホで撮影したのでした。後ほどこの写真は、ドローンの位置を特定するのにとても役立つ1枚となります。これがなかったらもう手がかりなしでした。

「どう頑張っても遠隔操作で機体が戻ってくる可能性はゼロ」という事実を受け入れるしかありません。このまま諦めるか、探しに行くか。「落ち着け、落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせながら、まずは食べ途中だったおにぎりを食べ、乾いた口に水を流し込み、冷静になるよう心がけました。
時刻は13時30分。体力と時間はまだ大丈夫そうだ。水は少ないが、なんとか持つだろう。スマホで撮影した位置情報と、地図アプリの地図を何度も見比べ、失踪場所の大体の目星を付けました。
「よし、とにかく探しに行こう」。
そう決めて、最後に記録された失踪場所に近づくため上の尾根へ伸びる登山道へ向かいます(上記写真の白い点線ルートが登山道。青い点が自分のいる場所)。位置的にこの上だという場所で重い荷物を置き、小さなリュックに水だけ入れて、急斜面を登ってみることにしました。

しかし、途中から斜度がどんどんキツくなり、「これ、足を踏み外したら死ぬな・・・」と感じるほどになってきたため、諦めて元の場所へ戻ることに決めます。危険な急斜面の登り降りでかなり緊張したため、体力もかなり消耗してしまいました。
悩んだ挙句、ドローン失踪場所から離れてしまうけれど登山道をさらに上に登り、ドローンがあるだろう場所と同じくらいの標高まで達してから、その後トラバース(横移動)してみようと決めます。
この判断が大正解。60mほど高度を上げたところに小尾根があり、その上に細い轍が、ドローンの消えた方に向かって伸びていたのです!
もしかしてドローンのある場所に行けるかもしれない。。。はやる気持ちを抑えつつ、周囲を確認しながら歩を進めていくと・・・(続きは以下の動画でご覧ください)。
全損かと思いきや、結局外傷はプロペラ2枚のみ、その他は問題がないようでした。ジンバルとカメラを繋ぐ部分がまれにジジジと変な音を発することがありちょっと心配ですが(この部分が一番壊れやすい)、今のところ通常に飛べています。リマに行く機会があれば点検に出さなければ。とにかく・・・無事に回収できて本当によかった!!!
ちなみに、墜落した瞬間の映像はこちら↓。勉強にはなったけど、もう2度と体験したくない😅。
◎教訓◎
1)今回は大尾根と小尾根の間に機体が入り込んでしまい受信信号が途切れ、操縦や障害物センサーが効かない状態で墜落しました。撮影前に、地形図や地図アプリなどであらかじめ撮影地周辺の地形を確認したほうがよい。
2)可能であれば機体を常に見ているアシスタントがいるとよい。撮影画面に集中すると機体から目が離れてしまう。
3)万が一機体が戻ってこない場合はすぐに機体の位置(GPS情報)を確認する。
4)距離は近いが危険度の高い直登ルートよりも遠回りしてでも安全なルートで探しにいくことを試みる。
おしまい。
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