Nature and Interpretation Peru
nandi peru

Me acuerdo ese día de repente

パンやケーキをひたすら作っていたあの頃

  • 2024.02.09
ワラス ペルー ブログ 自分のやりたいこと 井上晶 ナンディ・ペルー

ワラスに住む友人が主催するホームパーティに誘われたので、バナナケーキを作って持っていくことにした。

このバナナケーキ、自分がペルーに住むために日本を出た2010年(か、2009年)に、血は繋がっていないけれど家族同然の付き合いをしているあるお母さんに作り方を教えてもらったものだ。

ペルーに来た時にはスペイン語は全く話せず(事前の勉強は一切しなかった)、もちろん仕事もなく、その頃作ったバナナケーキが好評だったことから、あいている時間で、つながりのある人たちへの販売のためにせっせと作っていた。それが発展して、パン作りにも力を入れた。しかし当時はスーパーで強力粉が売っておらず、薄力粉しかない状態で、こねてもこねても発酵のガスを包み込むグルテン膜がうまくできず苦労した。家にあったアンティークなオーブンが癖ありすぎて、途中で電源がしょっちゅう切れて、これも本当に大変だった。しかしこれが唯一の収入源だったことから、何度も何度も試行錯誤を繰り返した。

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リマにあった有名なパン屋のパン作り講習会にも参加した。ちゃんとしたオーブンを買おうと、パン作り関連の機械を販売する店が並ぶ治安の悪い通りも歩いた。パンこね機も、パンを陳列する台も、見積もりを取っていろいろ見た。日本から来たパン作りの専門家と話す機会があり、小麦粉に吸水率があることを知り、マニアックな研究もした。天然酵母にも手を出した。当時、次の観光ブームがやってくるともっぱらの噂だったチャチャポヤスという町でパン屋を開くための構想も考え、1ヶ月滞在して家や土地探しまでした。

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が、いつだったか、「やーめた!」と思って全てをやめた。なぜって? ここまでやって気づいたことがあったからだ。「パン作りは俺が一生をかけてやりたいことではない」。それ以上でもそれ以下でもなかった。自分の好きなことはスケールの大きな自然の中に身を委ねること。圧倒され畏敬の念を抱くしかない美しい自然、気持ちが解放され本来のリズムを取り戻せる自然、そんな世界があることをより多くの人に知ってもらいたい。

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本気でやったからこそ見える結果があった。おかげでできることが増えた。そして今、当時の選択に1mmの後悔もしていない。「どうやって食べていくんだ!?」という使い古された言葉に踊らされず、心の声を聴いて本当に良かったなと、バナナケーキの焼き上がりを待ちながら思い返している。

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