ここ最近、身の回りでさまざまなことが起こり、失望や絶望を感じる場面が続いていた。正直なところ、気持ちはかなり落ち込んでいて、「この場所で、このまま仕事を続けていけるのだろうか」と思い悩むことさえあった。
しかし、失望を引き起こしたある出来事がきっかけで、12月20日から21日にかけてサン・ペドロ/San Pedro(現地名:ワチュマ)の儀式があることを2日前に知ることができた。12月21日は南米の夏至。太古から重要視されてきた、天文学的にも特別な日だ。
直感的に「参加しなければ」と思い即決。準備期間は短かったが、その日から食事制限を行い、当日は朝から絶食して夜の儀式に臨んだ。
ワチュマとは、アンデス原産のサボテン(Trichocereus pachanoi/Echinopsis pachanoi)で、精神展開作用を持つメスカリンを含む植物だ。ワラスから車で片道3時間程度の場所にあるチャビン・デ・ワンタル遺跡では、今から約3000年前からすでに、アンデスの3つの世界観 ー 現世:カイパツァ、下部世界:ウクパツァ、上部世界:ハナンパツァ ー やそれらを司る守護獣を人間と繋げる媒体として使用されていたことがわかっており、アンデスの精神文化と深く繋がっている聖なる植物、いわゆるマスター・プランツの一つとして知られている。
今振り返ると、今回の参加は、ワチュマに導かれていたのだろうと思わずにはいられない。儀式ではちょっと苦しんだ時もあったけれど、ワチュマはハートのメディスン/Medicina de corazónと言われるだけあって、喜びや優しさに溢れる素晴らしい体験となった。
焚き火をみんなで囲みながら、火の粉舞い上がる上空を仰ぎ見ると、ユーカリの木立の隙間からたくさんの星々が顔を覗かせていた。舞い踊る灼熱の炎や熾火の色は言葉では言い尽くせないほど神々しく鮮烈で、AIには絶対に生み出せない美しさと確かな存在感を放っていた。世界は美しい、この美しさを自分なりに追求していけばいいのだと思った。「美しい」「ありがとう」という言葉が何度も頭の中を駆け巡った。シャーマンと参加者が醸し出す空間には、互いを尊重し、静かに見守り合う優しい世界があった。儀式の最中に歌われた歌を通してもハッとさせられることがあり、癒しと学びがあった。
失望、絶望がゆえにパタッと閉じていた心の扉を、一気に開いてくれたワチュマ。アンデスの叡智って、本当にすごい。
